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82話 運び出されるもの

Auteur: 八月 猫
last update Date de publication: 2026-08-09 09:00:13

 引っ越し業者の人たちは、手際よく段ボールを運び出していった。

 本。

 食器。

 服。

 小物。

 私が何日もかけて選んだものが、次々と部屋から消えていく。

「こちらも運びますね」

「お願いします」

 返事をするたびに、部屋の中の景色が変わった。

 壁際に積まれていた箱がなくなり、床が見える。

 クローゼットの前が広くなる。

 食器棚の一段が空になる。

 ひとつ運ばれるごとに、私がここで暮らしていた痕跡が少しずつ薄くなっていく。

 その光景を、私はリビングの端で見ていた。

 悠斗は玄関側に立ち、業者さんに段差のことや駐車場所のことを説明していた。

 必要なことだけを、落ち着いて話している。

 時々こちらを見るけれど、何も言わない。

 引き止める言葉も。

 大丈夫かと何度も聞くことも。

 なかった。

 そ

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第9話 大丈夫の癖

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第8話 言えなかったこと

     翌日の朝、私は少し寝坊した。 目を覚ますと時計は七時十分を指している。「……やば」 慌てて起き上がる。 いつもならもう朝食を作り始めている時間だった。 私は急いでキッチンへ向かう。 でもそこには思っていた光景がなかった。 悠斗が一人でコーヒーを淹れていた。

  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第7話 私が知らない時間

     写真を閉じたあとも胸のざわつきは消えなかった。 私はソファに座ったまま、ぼんやりスマホを握りしめる。 居酒屋の明るい照明。 楽しそうな笑い声が聞こえてきそうな写真。 その端に映っていた悠斗。 私の前で見せる顔とは少し違って見えた。 なんでだろう。 笑っていただけなのに。

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